
水元さきの
2020/04/27
水元さきのさんのイラストを描く過程、ダイジェスト(30秒版)コンセプトはのちほど。
石川:描き始めたキッカケって何ですか?
水元:中学生時代、周りに絵の上手い友人がいて、楽しそうだったのがきっかけです。最初はぜんぜん描けなかったです。なので既に完成されているものを真似するところから始めました。模写ですね、ありがちだと思うんですけど。
好きな絵を描くっていう行為は、飽きないんです。好きな漫画家さんのコマの顔をそっくりそのまま描くんですよ。それだけで自分の描いたものがどんどん増えていくので楽しかったんです。授業中に教科書に書いたり。
石川:就職はしなかったんですか?
水元:一回しています。
一般企業の営業をやっていました。デザインもするのかなとか思ってたんですけどね。勘違いでした。でも基本的な事務作業とかクライアントとのコミュニケーションとかは自信がつきました。メールのやりとりとか、電話受けとか。
フリーランスで経営をしていく不安が軽減されました。
石川:今っていきなりフリーランスの人とかいますよね。
水元:いますね。でも正解はないと思うので、自分はこのスタイルでいくんだって納得できれば、その経歴は特になくてもいいかなと思います。私の場合は、就職の経験があって良かったかな。自信があればどっちでもいいと思います。
石川:正直、あれ?っていう人いますからね。
水元:そうですね・・。社会的なコミュニケーションに不安があるのであれば、なんらかしらの経験があった方が良い人もいるかもしれないです。フリーランスを続けていく中で、無茶な依頼がきたときに、たとえば極端に納期が短いとか、そういうときの対処法として私の場合は営業経験が生きている感じがします。結果論ですけど。
でも、そういう経験がなくてもストリート感というか、常識にとらわれないやり方ができたかもしれないですね。
石川:絵柄はどんな人に影響を受けていますか?
水元:堀田きいちさんの影響をかなり受けています。「君と僕。」という作品で知りました。当時のみんながよく読む漫画って少女漫画とか少年漫画で、線の書き込みが多い絵が上手いと思っていました。堀田さんの描く絵は線がシンプルで、そういう表現があるのか!って中学生の時に気づかされたんですよね。
あと、もう1人が今日マチ子さん。彼女が描くイラストはすごく彩色が独特で、簡略化された色使いが空気感をより出してて、いいなぁと思います。見たままではない色を使うっていう表現に魅力を感じました。人やモノの影を青で塗るっていうのは、今日マチ子さんの影響を受けています。
このお二人から、見たものをそのままに描くことだけが、絵の上手さじゃないってことを学んだというか、描きたい気持ちにさせられました。
石川:何で描かれていますか?
水元:紙と鉛筆と12.9インチiPad ProとApple Pencil とソフトはProcreateです。
石川:Procreateって何がいいんですか?
水元:買い切りで経済的(笑)機能がある程度あって、アップデートもするし、不足はないです。RGBもCMYKも使えます。
それから、使いやすい点がブラシが多いってこと。Photoshopとかもブラシはありますけど、普通カスタムしますよね。そのやり方がわかんない(笑)難しいところがわからないので、最初からたくさん種類が入ってるProcreateがいいんですよ。私もデジタルは初心者なので。
アナログの線の強弱とか筆の滑りが、私の中ではすごく重要で、最初デジタルで描くのはすごく難しかったんです。液晶タブレットは、高いし重いし大きいので導入するのは躊躇してたんですよね。ペン先と線の視差も気になって、デジタルはイヤだっていう考え方だったんです。スキャンしたものを加工するのだけデジタルは使っていました。
でも、iPad Proは液タブとほぼ同じように使えるし扱いもラクです。フレキシブルに使える端末で、アナログのタッチをリアルに表現できるっていうところが驚きで魅力でした。iPad Proはペーパーライクフィルムと合わせるとアナログにかなり近いです。なので、デジタルを嫌っていた理由がなくなったんです。今はもう線画も含めてデジタルで描けるようになりました。
石川:Procreateのソフト特有のテクニックってありますか?
水元:多分、他のソフトもみんな優秀じゃないですか。漫画のトーンが多いCLIP STUDIO PAINTとか、水彩が得意なAdobe Frescoとか。それと比べてもProcreateは直感的な操作ができるし、複雑な機能があまり入ってないので、デジタル初心者に良いと思います。
石川:今回描いていただいたイラストの制作時間を教えてください。
水元:だいたい6時間ぐらいですかね。構図で1時間半ぐらい、線画で2時間半ぐらい、塗りで2時間ぐらいです。構図を決めるのは結構悩みますね。塗るのが一番早いです。ありがちだと思うんですけど、描くまでに時間がかかりますね。ネトフリみたり(笑)
石川:普段のクライアントとのやりとりの流れはどんな感じでやってるんですか?
水元:要望・用途・仕様・予算を聞いて、枚数が変わるとか内容調整をさせていただいて、ラフを出します。
石川:ラフもデジタルですか?
水元:デジタルです。お仕事で描くものは修正入る前提なので、動かしたり大きくしたりとか、後から加工ができるのが絶対いいんですよね。紙の場合はそれができないので。漫画のお仕事のときは特に便利でした。切り貼りできるのがデジタルの良さですね。
石川:今回描いていただいたイラストのコンセプトを教えてください。※このサイトのカバーイラストは黄色がメインかサブで入っていることと、デザイナーやイラストレーターは苦労も色々とあるけど、頑張ってトレッキング(山登り)していこうみたいな感じでってお願いをしています。基本は好きに描いてくださいって感じです。
水元:それぞれの目的があるけど、行き先は同じみたいな。左の子は山の上でおやつを食べたり嗜好品を楽しみたくて、右の子は景色とか山の上での発見を楽しむことを目的としているイメージです。
石川:めっちゃいいですね。イラストって自由に描いてもらうのが一番いいんですよね。この人が描いたら間違いないって気持ちで発注するので、基本は何も言いたくないんですよ。なので自社サイトの案件は修正をお願いしたことないです。
水元:これも「山登りの絵を描いて」と言われていたら、この絵にはならなかったです。山登りってのは要素程度にって聞いてたので、ちょっとこれぐらい方向性を振ってみるとか。
水元さきのさんのイラストを描く過程(完全版)
石川:SNSですごい沢山フォロワーがいらっしゃいますが、どのタイミングで増えましたか?たぶんみんな増やしたいなと思っていると思うんですけど。増やすコツとかってありますかね。
水元:いまInstagramのフォロワーが3万人ぐらいなんですけど、高校生のときからやってました。インスタの初期ですね、まだユーザーが少なくて絵をアップする人があまりいなかった時代なので、みんな褒めてくれるんです(笑)お花の写真をあげている主婦が「イラストかわいいですね」とか言ってくれる平和な世界。
石川:あーなんか牧歌的ですね(笑)私は、当時のInstagramは全く理解できなかったです。なんで写真だけをあげてる人がいるんだろうって思っていました。
水元:最初はマイナーでしたね。8年も使っているので、3万って言うほど多くはないんですよ(笑)
ずっとやってるから作品点数は結構多くて、新しいものが増えていく期待感でフォローしていただけたりするんだろうなと思っています。それで結果、今の数じゃないかなと。なにより活動し続けることが大事だと思います。
前はフォロワー数が増えると嬉しかったし、いいねの数を絵の評価だとか思ったりしたんですけど、数字を基準に何かを測るみたいなのはちょっと違うなと思うようになりました。今はあまり気にせず好きなものを描いて載せてます。
石川:最後に、このサイトは基本的にはデザイナーやイラストレーターの初心者の方に向けたサイトなのですが、初心者の方に向けてどういう風に学んだら良いとかアドバイスをいただけますか?
水元:私がそうでしたけど、やっぱり真似ることですかね、イラストでもデザインでもまずはやってみる、見てるものとやってみるのはだいぶ違うので。デザインならテキストが何ポイントでカーニングがどのぐらいでとか。やった分しか前には進めないので。とにかくなんでもいいから作ってみる、真似してみるしかないと思います。
石川:ありがとうございました!またよろしくお願いします。
水元さきの
1995年生まれ 東京都在住。一般企業への就職を経てフリーのイラストレーターへ。青を基調としたイラストを描く。書籍やCDジャケット、広告などのイラストを手掛ける。
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