清水 健次
2018/12/12
これからお話しようと思うことは、僕が常々思っていることであり、現場で働くデザイナーや、これからデザイナーになりたいという人に是非とも聞いてほしいことです。
当たり前のことのはずなのに、出来ていないという人を何人も見てきました。
デザイナーは少なからずデザインの仕事を「自分の作品」と意識しています。
それ自体は全然悪いことではないですが、意識の方向を間違う人が多いんです。
とにかく自分がカッコいいと思うものを作ろう、自分が作りたいものを作ろう、自分が…と、やたらに自分を出そうとする。
これはデザイナーとしては間違いです。
例えば、靴の広告をデザインする時に、どうしても自分が考えたオリジナルキャラのイラストが描きたくて、そのキャラクターがその靴を履いているイメージを全面に出す。
そういう広告もありかもしれませんが、基本的にはダメです。
商品を打ち出したいのに、キャラクターが前に出すぎていますし、そもそも誰も知らない自分のオリジナルキャラクターを広告にどーんと使ったところで効果はありません。
でもこれが自分のセンス!自分のデザインなんだ!と言い張る人はデザイナーには向いてません。
アーティストになった方が満足するでしょう。
①で自分を表現することをやめろということを言いましたが、100%やめろということではありません。
むしろそういう気持ちは持っておいてください。それが武器になる場合もありますし、常に自分のセンスを磨くことを忘れないでください。
ただその前に以下のことを意識しておいてください。
デザイナーが最も意識しなくてはいけないのが、評価する側の人間です。
評価する側の人間とは、もちろんエンドユーザーのことであり、その前のクライアントのことです。
広告やパッケージを見て、その商品、サービスが魅力的に感じるか、購入してくれるか、契約してくれるか、そういうことを意識しなければなりません。
クライアントとしても、自社の商品、サービスを魅力的に伝えるデザインであれば満足するに違いありません。
デザインはエンドユーザーにとっておまけでしかない場合が多くあります。
例えば自分がある商品の広告をデザインして、その広告の商品を買った人がいるとします。買った人は広告を見て購入を決めましたが、理由は広告のデザインが良かったからではありません。
他より安かったから、広告を見て商品に興味を持った、欲しいと思っていた商品だったから、理由は様々です。
しかし、他社商品より安さをアピールしたデザインをしていなかったら買っていなかったかもしれません。的外れなデザインをしていたら、欲しいと思っていた人は商品に魅力を感じず、購入をやめるかもしれません。
デザインの力とは、そういった無意識下で感覚的に働きかけるものだと思います。その商品の魅力の裏側にはデザインの力があるということです。
自分のデザインが主役ではありません。諦めて裏方に徹してください笑
エンドユーザー、クライアントに魅力を伝えられるデザインを作るために、いくつか理解しておかなければならないことがあります。
まずはこれを把握しておかないと話になりません。
この商品はカッコいいのか、かわいいのか、安いのか、大きいのか、小さいのか、長いのか、柔らかいのか、速いのか…
その商品、サービスの特徴を理解し、それを魅力的に伝えられることが大事です。
デザインするに当たって、男性向けなのか、女性向けなのか、若者向けなのか、シニア向けなのか、ファミリー向けなのか、ビジネス向けなのか、ターゲット層を把握することで自然とデザインの方向性が決まります。
会社のロゴマークや他の商品、サービスによってメインカラーが決まっている場合、その会社の商品だということがわかりやすいようにそのカラーを使ってデザインするのも一つの手です。
その他にも、清潔感を出したい場合は青系を基調としたり、インパクトを与えるために赤を基調としたりと、見る人の感覚を刺激する色を考えたり、
赤緑でクリスマス、春を連想させるピンクなど、時期に合わせた色を使ったりも効果的です。
とんでもなく時間のかかるデザイン処理をして、納期に間に合わない。ということが無いように、スケジュールと相談しながらデザインを考えましょう。
予算というのは、安いから手を抜けということではありません笑
例えば、撮影する予算も無いし、素材写真を買う予算も無いのに、頑なにこういう写真が使いたい!というデザインプランは現実的ではありませんよね?
時間と予算をしっかり考えたうえで、ベストな答えを出すこともデザイナーには必要です。
全てではありませんが、重要なので心得ておいてください。
これらを踏まえて、自分の実力を出していきましょう。
③を実践するためには、クライアントとの念入りな打ち合わせが必要です。
③で挙げたことをヒアリングするのはもちろん、
あれ?ここはどういう扱いになるんだろう?
この場合だとどうするんだろう?
こう思うんだけどこっちの方がいいのでは?
といった疑問が生じた場合に、質問をしないで「理解したふりをする」デザイナーがいるんですよね…
聞きすぎると、クライアントにこの人大丈夫かなと思われるんじゃないだろうか…仕事できない人だと思われたくないし。なんとかなるだろう。
と、思っているのかもしれません。
しかし、ヒアリングを十分にしなかったせいで、仕上がりがまったくクライアントが求めているものと違うものになったり、修正回数が多くなったりするかもしれません。そっちの方が仕事できない人だと思われてしまいますよね。
打ち合わせの段階でも、その後の作成中でも、少しの疑問があればすぐに確認しましょう。
しつこいくらいがちょうどいいんです。
デザインのことはデザイナーが一番わかっているので任せておけ、と少し勘違いをしている人がいます。
確かにデザインのことはデザイナーが一番わかってないといけませんが、任せておけと言えるのはヒアリングを終えて、十分理解した後の話です。
こうやって、エンドユーザーのために、クライアントのためにと考えてデザインすることをつまらないと感じる人がいるかもしれません。
デザインがハマった時の快感を知ればつまらないと感じないとは思いますが…
どうしても自分のデザイン、作りたいものを作りたい、という人にいい方法があります。
例えば提案段階で、3案提出することが決まったとします。
A案はちゃんとエンドユーザー、クライアントのことを考えてこれがベストだと思えるデザインを作成します。
B案は、A案が一番いいと思うがこちらもいいと思うといういわゆる代案を作成します。
そしてC案で思いっきり自分を表現したデザインをしてみる。という方法です。
これは僕もよくする方法なのですが、単に作りたいものを作れないストレスを発散しているわけではありません笑
この場合、大抵好きに作ったC案は「捨て案」として扱われます。
決してダサいとか手抜きという意味ではありません。単に攻めすぎてニーズに沿っているか微妙だなという意味です。
しかし、奇をてらったり、攻めすぎたりしたC案と比較することで、A案、B案がどれだけいいデザインに仕上がっているかということがわかりやすくなったり、ABCで幅のあるデザインを見せることもできます。
意外といい効果を生む場合があるんです。
もしかしたら、すごく気に入ってくれることもあるかもしれません。そしたら嬉しいですよね笑
これまで、僕が思うデザイナーの心構えの基本を書いてきました。
①で言ったデザインは自分を表現することではないというのは、自分を表現するのが悪いということではありません。
これらの基本をしっかり心得たうえで自分を表現することは、他のデザインと差がつくオリジナリティなので、プラスになることも大いにあります。(マイナスになることもあります笑)
とにかくこれらの基本をないがしろにして自分の作りたいものを作るというのはおこがましい話だし、よいデザイナーとは言えません。
よいデザイナーになるためにはいろんな葛藤もありますし、険しい道のりです。
僕も道半ばです。お互いがんばりましょう!
清水 健次
元自衛官で、漫画家志望のデザイナーという異色の経歴。イラストレーターでイラストをサクサク描くのが得意技。アニメーションなどにも長ける。センスのみでご飯を食べてる、稀有なデザイナー。
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